病院で肩(インナーマッスル)腱板部分断裂と診断された例

病院で肩(インナーマッスル)腱板部分断裂と診断された例

病院で肩(インナーマッスル)腱板部分断裂と診断された例

始めに肩関節の腱板断裂について簡単に説明しますので施術記録を読みたかったら少し飛ばしてください。

肩腱板断裂について

腱板断裂は、肩の腱板(四つの肩の筋肉が結びつく腱の集まり)が部分的または完全に損傷する状態です。

腱板は肩の周囲に位置し、主に4つの筋肉(棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋)が結合しています。これらの筋肉が腱板に付着し、腕の運動を制御します。

一般的に、腱板断裂の好発部位として腱板の上部が最も影響を受け、特に腱板の前部がよく損傷します。筋肉でいうならば棘上筋です。

これは、腱板が骨と骨(肩峰と上腕骨頭)に棘上筋が挟まれることにより起こったりします。

 

1. 発生機序: 腱板断裂は、以下のような要因によって発生することがあります。

① 高齢化: 年齢とともに腱板は衰え、断裂のリスクが増加します。

② ダメージ: 落下、事故、急激な運動による急激なストレスが腱板に加わることがあります。

③ 慢性的な使用: 繰り返しの過度な肩の使用や過度な負荷が腱板にダメージを与えることがあります。

 

3. 症状: 腱板断裂の症状は個人によって異なりますが、一般的な症状には以下が含まれます。

① 肩の痛み: 特に肩を使うときに痛みが増すことがあります。

② 弱化: 肩の力が弱まることがあります。

③ 肩の運動制限: 肩を上げたり、後ろに動かすのが難しいことがあります。

④ 夜間の痛み: 寝ている間に肩が痛むことがあります。夜間痛で来院されることが一番多いという事が日本整形外科学会から発表されています。

 

4. 治療方法: 腱板断裂の治療方法は症状の程度により異なります。一般的な治療オプションには以下が含まれます。

① 保存的療法: 片側肩の負担軽減、物理療法、痛みの管理。

急性外傷で始まった時には、三角巾で1~2週安静にします。
断裂部が治癒することはありませんが、70%は保存療法で痛みが軽減します。

その他注射療法や運動療法があります。肩関節に炎症がある場合はステロイドや麻酔注射を行い、夜間痛がない場合はヒアルロン酸になります。

鍼で行う場合は炎症が収まるので痛みの軽減にはなりますが、断裂自体は治りません。

② 手術: 重度の断裂には手術が必要となることがあります。手術には腱板修復や腱板の部分摘出が含まれます。内視鏡で行う場合や解放する場合もあります。どちらを選んでも手術後は、約4週間の固定と2~3ヵ月の機能訓練が必要だそうです。

5. 予防: 腱板断裂を予防するためには、以下のことが役立つかもしれません。

① 適切な体の使い方: 過度な負担を避け、肩の運動を正しく行う。

② 筋力トレーニング: 肩の筋肉を強化し、腱板のサポートを強化する。

③ 事故予防: 安全な環境での運動や活動を確保し、事故を予防する。鍼でお手伝いができるのはこちらとなります。身体を柔らかくしたり、筋肉疲労を取ったり色々な効果があります。

 

症例報告

50代男性、2年前に事故で転倒し、病院でCTおよびMRIを受け、腱板の部分断裂と診断されました。その後、最終的には肩インピンジメントの診断となり、肩の機能を回復させるための治療を受けました。

 

初期段階では、腕をほとんど上げることができず、約1年半のリハビリテーションの結果、肩の可動域は約90度まで回復し、前方挙上もおおよそ150度まで向上しました。

 

1年半にわたるリハビリテーション期間中、チューブやマッサージなどの治療、生理食塩水、PRP療法(Platelet-Rich Plasma療法)などが行われました。PRP療法は、患者自身の血液から作成した多血小板血漿を肩に注入し、体内の自己修復能力を活用して治療を進める方法です。この治療は自費で約4万円かかり、2回受けましたが、痛みの軽減はわずかでした。

 

また、自身でも運動や体操を行うなど、できる範囲で積極的な自己ケアを行っていました。

 

さらに、複数の理学療法士からは肩甲骨の動きが悪いと指摘され、本人は自己評価と実際の動作に差があることに気づいていました。このため、局所的な筋肉の柔軟性を向上させるために太い鍼治療を受けることを望んでおり、理学療法士にも相談していました。

 

医療機関では、主治医が変わり、初めの医師は手術が必要ないとの判断でしたが、後任の医師は手術を勧める傾向がありました。しかし、患者本人は2年前に手術が必要だと言われたものの、現在でも手術には踏み切る気が起きませんでした。

 

合計で2年間のリハビリを受けましたが、最後の6か月間では改善の兆しを見ることができず、自身の意欲も次第に低下していったことに気づいています。

当院での経過

患者様は当院に、肩の痛みを軽減し、肩関節の可動域を改善したいという目的で来院されました。筋肉が柔らかくなれば痛みが取れる気がしていたのでしっかりした鍼の施術を望んでいました。

 

1回目の施術時、肩の外転は90度程度で制限があり、痛みが伴っていました。また、肩の後ろ(脇の下)にも痛みを感じていました。挙上動作にも痛みがあり、左右でわずかな差がありました。反対側の肩も制限があり、夜間にも痛みを経験していました。

施術では、主に肩関節周囲の回旋腱板の施術を行い、夜間痛を緩和するために首にもアプローチしました。さらに、三角筋上部の痛みに対処するために三角筋も施術に取り入れました。特にわきの下あたりの痛み訴えているのと、問診時に聞いた肩甲骨の動きを出せばよくなると言っていたのでそれも参考にして肩甲骨の動きの向上を目指し、肩甲下筋にも焦点を当てて施術を行いました。

 

2回目の施術時、外転の可動域が約10度改善し、挙上時の痛みが減少しました。1回目の施術後の効果が維持され、予定通りの進展が見られました。

 

3回目の施術時、反対側の肩の可動域が向上し、最も感じる痛みの位置が変わりました。肩と肩甲骨の間(脇の下付近)の痛みから、三角筋の上部(肩関節上部)の痛みへと変化していきました。

 

4回目の施術時、肩の調子が良くなり、痛みはあるものの動きの制限が減少し、左右での差もかなり縮小しました。さらに、肩の痛みが軽減したことで、反対側の肩や股関節の動きや痛みにも注意を向け始めました。

そこで、右の肩も施術を希望されていたので様子を見ながら施術を開始しました。

 

5回目の施術時、地面に手をついた際に肩に痛みが生じ、外転の可動域は左右差がなくなりつつありましたが、途中で少し痛みを感じる箇所がありました。さらに股関節の外転、外旋で痛みが出るためそちらの施術も開始しました。

 

簡単な質問をしてみました。

①当院とのコミュニケーションについてどのように感じましたか?あなたの質問や懸念に対して十分に対応してもらえましたか?

A:スタッフとのコミュニケーションはある程度スムーズでした。質問や懸念にも適切に対応してもらえました。

 

②回復のために個人的に取り組んだことや、日常生活での変化はありましたか?具体的な取り組みや変化についてお聞かせください。

A:回復に向けて、普段からストレッチを心がけて体を動かすようにしました。

 

③当院の治療やケアがあなたの生活にどのような影響を与えましたか?仕事や趣味、日常生活において何か変化がありましたか?

A:当院の治療とケアのおかげで、ビリヤードの趣味における右肩の痛みに対処でき、左肩の痛みや動きの制限も改善されました。その結果、今もビリヤードを楽しむことができています。

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